Column

葬祭コラム

泣き女と魂呼い

昔の葬送習俗の中 で、「泣き女」は現代でも中国や台湾でなどで見ることが出来ます。お葬式の時に「儀礼的に泣く役割」の女性です。日本でも古い文献に はその役割を職業的にしていたという記述があります。
越後長岡領風俗問 答状答(江戸時代後期に屋代弘賢1758-1841が、全国に今でいうアンケート調査「諸国風俗問状」を行い、 その答えとして返ってきたもの)
「略・・悲泣をた すくるによく声をあげて泣者をやとふて、泣かしむる事ありとぞ。喪家の貧富、泣者の上手下手によりて、・・・略」そのあとの記述とし て、報酬にあわせて「三升泣き」「一升泣き」などの言葉が出てきます。また同じ返答に淡路国からは「泣き婆」の報告もあります。民俗 学の調査では主に島嶼部や海岸、また南の方に多いみたいです。ではなぜ女性でなければならないのか?やはり、巫女やイタコに代表され るように女性の霊性を重んじていると思われます。号泣することが呪術的な直接行為として、荒ぶる魂を鎮めることを意図しています。い ずれにしても死者の鎮魂を目的としていると思われます。
それに対して、死者の蘇り、再生を促す習俗もあります。それが魂呼び、魂呼いと云われているものです。死の直後、死者の名前を「儀礼的に大声で叫ぶ」 ことです。中国の「礼記」巻2の中に詳しく記述されています。枕元で叫ぶことが基本ですが、呼ぶ、叫ぶ場所には、いろいろなしきたり があります。屋根の上で西方に向かって叫ぶなどが一般的ですが、和歌山県では屋根の瓦を剝いで、そこから階下の死者に向かって名前を 呼ぶというのもあります。島根県隠岐の島では屋根に穴をあけてそこから細引きを垂らし、死者の髪の毛に結びつけて、屋根の上の人とつ ないでから呼ぶということです。千葉県では井戸の底に向かって、というところがあります。確かに井戸は末期の水と同一で、離脱した魂 は、その直後に水を求める、ということもありますが、井戸があの世の入り口という想像もできます。
死の確定が不確かな時代では、思わぬ蘇生などもあったことでしょう。そのような言い伝えや伝説が多くあります。い までも私たちは通夜というしきたりを踏まえて、死者との寄り添いを行っています。その原意もこのような古い習俗から来ているものなのです。
 
台北市の火葬場で

台北市の火葬場で

 

 

台北市の火葬場で

台北市の火葬場で