Column

葬祭コラム

「羽つき」は邪気払い 縁起ものとは

昔の正月の点景は、歌にもあるようにコマ回しや凧揚げと羽根つきである。師走の羽子板市は現在でもにぎわう。その年、話題になった人物が羽子板になり話題も集める。時勢の縁起ものとして正月飾りには欠かせないという人もいる。けれども本来は遊び道具であるはずだ。
 
♪〜ひとめふため みあかしよごめ
いつやのむさし ななやのやくし ここのや とうや〜♪
 
こんな歌を口ずさみながら、リズミカルに羽をついていた。
羽子板は室町時代、京都で誕生したと云う。カーン、カーンという音をたて、それで「邪気を跳ね返す」というおまじないで、むかし、羽子板は胡鬼板(こぎいた)と呼ばれ、厄除けのために、豆を打ったのが始まりと伝えられている。
羽子板でつく羽の玉は、無串子(むくろじ)という黒く堅い木の実が使われ、これは子どもの無病息災を祈願するものとされている。そこから、出産祝いに羽子板を贈る風習もある。それが、縁起ものとしてもお正月にも飾られるようになった。
さて、縁起ものとは何か?人力では解決できないもの(天災や疫病など)に対しての恐れは、常にあるが、日常を「無病息災、家内安全」で暮らせることが何よりも大切。縁起ものは、そのシンボルといってよい。祈願の対象を神様だけではなく、いろいろな呪物(おまじない)にあがない、毎年更新させることで新たな加護を得る。そのようなものが、縁起ものということで、家庭の片隅に置かれた。人知の及ばない謙虚さを感じていたということだ。
現代では健康祈願も「サプリメント信仰」化している。あくまでも「気休め」程度かもしれないが、それぞれがもっともらしい論拠でその効果を解説する。合理的で即効性のあるような気もするが、縁起ものにすがる感性の方が、何か豊かなような気もする。