Column

葬祭コラム

遺体の安置

 ご遺体を自宅に搬送して安置することも少なくなりました。おおくは葬祭ホールへ運ばれることが普通で、首都圏では約70%以上が、病院から葬祭ホールへ搬送され、安置され、その後その葬祭ホールで通夜、葬儀が行われることが現代の通例となっています。
時々、火葬場が混んでて1週間待ち、などといわれることがあります。火葬される人の数が増えて、その順番待ちと勘違いをしている人もいます。この原因は、主に火葬場併設の斎場(葬儀式場)がその火葬炉の稼動炉数に比べて少ないからということで、たとえば火葬炉が10基あり、毎時間ごとに火葬しているとすれば、単純に一日数十体の火葬が可能であるのに対して、式場は3か所しかない場合、そこでの通夜葬儀は1日に3件しかできないわけで、そこが混みあっているというような理由が大きい。
つまり、病院からの移送安置を火葬場にすると、そこでの保管と葬式施行が限られるということです。
まあ、自宅での安置というのも、都心部ではマンションなど建物の構造上の問題や近隣との関係などをふまえて、やはり葬祭ホールでの安置保管が手っ取り早い。そのためには、事前に数社の葬祭ホールなどを目星をつけておく必要がある。施設によっては保管室の数にも限りがあり、時には満杯のこともある。
病院は出なくてはならないし、あてにしていた葬儀社が対応困難の場合には、遺体の処置をしたうえで、数日間待たなくてはならないことで戸惑うことも多い。もしその葬儀社がでの対応がダメな場合、最近ではご遺体専門の保管施設もある。基本的にはそこでの通夜葬儀施行を強制するものではなく、別の葬儀社がお葬式を行っても構わないので、ご遺体の安置保管のみを引き受けてくれる施設もあるのだということを頭に入れておこう。
これはその葬儀社間で連携していることもあるので、事前相談などをしておく際に、万が一、お宅の葬儀社が手いっぱいで対応できないときは、どうしてくれるのかを聞いておくことも大切です。

 かって、自宅安置の時にはいろいろなしきたりがありました。北枕にする。畳を裏返す。
布団の下に茣蓙を敷く。着物の天地を逆さにして上掛けする。顔に白い布をかける。刃物を枕元に置く。一膳飯を山盛りにする。樒の枝を供える。団子を作る。神棚などに半紙を貼る。・・少し思い出してみてください。

 そこには私たちの死生観の表れとして、いろいろなしきたり慣例が見られます。その一つ一つの意味を説いていくことも興味深いことです。日本人の死者や葬儀に対する感性が見いだせます。


日本葬祭アカデミー教務研究室 二村祐輔