Column

葬祭コラム

新型コロナ感染症での葬儀対応の前に

 志村けんさんや女優の岡江久美子さんの突然の訃報は、大きなショックでした。有名タレントさんの最期としてはあまりにもあっけなく、人生の悲哀を禁じえません。謹んでご冥福をお祈りします。
 
 ◆さてお葬式の実務の面は、感染症の指定がなされると各種の対応制限がかかります。
 万が一、新型コロナで逝去した場合、感染症対策処置がなされます。
 第一にご遺体が非透過性納体袋に収容、密封されている限りにおいて、遺族は立ち会えますが、マスクや手袋など十分な感染予防を勧めます。
 また火葬は24時間以内でも可能です。(厚労省通達 令和2年4/25
何よりも私たちは、葬祭業務として、ご遺族の安全を第一に考えて対応します。
 そのために、指定感染症に基づく法的な指示でもあり、葬儀社もマスクはもちろん、ゴーグルや場合によっては、防護服などの着用でご対応することもあります。どうかこれらの対応にご理解とご容赦をください。
 またホールでのお葬式施行の場合、皆様の会葬などにも、いろいろ制限があります。
 現状は火葬後、社会的な情勢を見て、後日お別れ会や偲ぶ会、または本葬を営むことになります。
 ただし通常のご逝去の場合は、これまでどおり普通に進めます。
 決してあわてることなくご一報ください。
 ただし多数の会葬は感染防止の観点から避けるべきで、今は「家族葬」施行が中心になります。ご遺族の方々には、マスクの着用やホール、火葬場などの出入りに際しては、消毒液での手洗いなどをお願いしています。何よりも皆さん自身が発熱や体調には十分注意していただき、自己防衛をなさるようにしてください。
 
 ◆目に見えない疫病は過去にもいろいろな厄災いがありました。その都度、社会全体に大きな変化を引き起してきました。現状がいつまで続くのか見通しがつきません。社会制度も見直されるでしょう。
 この災禍で変わろうとしているものに私たちの死生観があります。     
 経済優先の社会は、自粛規制に頼るもろさが露呈し、暗く沈む日常生活が拡散しています。身近な人の最期を思うよう看取れない悲嘆は、有名人のコロナ死から実感しました。漠然とした悲哀を感じた人も多いのではないかと思います。
 これまでお葬式は形骸化・惰性化しているといわれてきました。けれども疫病死の対応がから、その死の発端が変化し、当たり前の慣例が踏襲できなくなると、それはそれで悔恨の情が募ります。
 生死が隣り合わせであることは頭で理解していますが、あくまでも他人事でした。
 人は無くして初めて、そのものの価値に気が付きます。
 お葬式は意味のある行い事であるという再認識がいかに大切か。これまで日本人として最も気がかりだったことは何か。それが自身の「死後の生活」ということでした。
 この安定を図るための庶民信仰が、いまさらながら先祖供養や祖先祭祀であったことが再認識できます。
 あらためて先祖に帰一して、これからの死生観を眺めてみる必要が出てきましたね。
 
2020.5 アカデミー関係各社・会報掲載記事